あの場所

おかんの実家にいってきた。
こどもの頃からいつも行っていた場所。変わらない場所。
ヒグラシの声と、鳥の声が聞こえる。
目を閉じていると気持ちがすーーーーっと遠くに連れ去られていく。

ここに来るとわたしは相変わらずこどものままだ。

1年半前から飼われている犬は超気さく。
「遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んでえええええ!」と飛びついてくる。
到着30秒後にはわたしの服は泥だらけで毛だらけになった。
ああ。バカ。でもバカな子ほどかわいい。
撫でて撫でて撫でまわしてやった。


おやつを食べております。前足でちゃんと持ってるんだよ。

メダカもいる。

花も咲いている。

ぶらぶらしながら思い出した。
このあたりに、桔梗が自生しているところがあったはず。
とても悲しいできごとがあった冬。
その次の夏に、お弔いのためにその桔梗を一本だけ摘んだ。
中2の夏だったかな。

ぼんやりと記憶だけを頼りに、あぜ道をかき分けて行く。
するとそこに、咲いていた。

たぶんあの時よりも広い範囲に、野生の桔梗が咲いていた。

いろんな気持ちが押し寄せてきた。

変わらない場所というのは、本当に本当にありがたい。

猫日3

初・猫カフェ
オサレ猫と戯れる夢の空間。

昼間に行ったせいか、猫さんたちはのったりしていた。
ずーっと寝ている猫さんもいた。
寝子さんだな。



「コレハシバケンデスカ?」

「イイエ。アメリカンショートヘアートイウシュルイノネコデース」みたいな。

とにかく、洋猫ってでかい。
近所で見かけたら猫って思わない。
「なんだか猫状のでも猫じゃない生き物を見ましたわたしは」って言うよ。

撫でれば「そこじゃない。もういい」と逃げられ、
カメラを向ければ「目線?無理」と目をそらされたりしたが、
それでも、生き物に触るのはなんともこう気持ちよいものでしたよ。



小学校の授業に週1回「生き物に触る」っていうのを入れたらいいと思うな。

猫日2



あの猫たちは最近だいたい朝と夕方定位置にいる。
今日の夕方もいた。

この間のは偶然かと思って三毛さんにおそるおそる手を伸ばしてみた。
そしたら受け入れてもらえた。
「もそっとこっちをお撫でなさい」みたいに、首の撫でてほしい部分をすり寄せてきた。
おお…じーん…。

その姿をみてハチワレもたたたたっと寄ってきた。
2匹で仲良く…と思っていたら三毛さんが「シャーーーーーーーッ!」と
ハチワレを威嚇した。
「危ないからこっちきちゃだめ!」
なのか
「よその人に撫でられようなど10年早いわ!」
なのかはわからない。

それにしても。
猫好きの同僚の言ったことは本当だった。
「一緒にいる猫の1匹を籠絡したら、他の猫も懐いてきますよ」。
本当にそうかも。
ハチワレも撫でる日も近いのかなあ。ニヤニヤ。

しかし、猫たちはカメラのフラッシュが嫌い。
赤目にならないようにちらっと光るのでもNG。
ぷいっと顔を背けるのはそのためだ。
ここは今後の課題。

夕日に向かい「猫の目線を望遠じゃなくてもいただけるようになるぞー!」と
誓ったのであった。

猫日

今日、あの三毛さんに初めて触った。
いつもつーんとしているあの猫に。
何年越しかの思いが達成された日である。

一緒に飼われているハチワレさんは三毛さんの動向が気になるらしく、
わたしが三毛さんの喉の辺を撫でている間、
「いいんですか!姐さん!」という感じにしきりと鳴いていた。

だんだん逃げなくなってきたのはうれしい。
でも…。
三毛さんは元気がない。毛艶が悪く、耳のあたりの毛が抜けていた。
抵抗する元気も失せて、しかたなく触らせてくれたんだろうか…。

だったら。
もう触らせてくれなくていいよ。
またわたしのことなんかつーんと無視するくらい元気になってよ。


[:W240]
2匹で夕涼み中に突撃。迷惑そう。



ハチワレはすかざずすーーっと逃げて離れたところへゴロン。

]
しばらく経ってハチワレが塀に上へ。しかし三毛さんはいけず。



「ふんっ!しつこいおばさんじゃわ」



「カメラ目線とかやらんのじゃからね」
「そうじゃそうじゃ」



「今度は目をそらしたまま座ってやるんじゃ」
「…姐さんこいつ懲りてませんよ」



「ほらっ!あんたも座る!」
「へいへい」



「無視無視!」
「(やっぱりぺったりちゃおーっと)」



「ふん!」
「姐さん…ガンコ…」


この後三毛さんはわたしの文字通りの猫なで声に籠絡されたのであった。
でもまあ、いやいや、かもしれんけどね。

旅日記 7月16日

旅2日目。

特に予定を決めていない行き当たりばったり旅。
わたしは津和野に未練があったのだが、
おとんは移動したそうで、おかんはどうでもよそさう。
そして「鍾乳洞は涼しいに違いない」ということで、
山口の美祢市秋芳洞へ行くことになった。

(津和野は今度ひとり旅で来るよ…)

津和野駅もなかなかのわびさびぶり。
セミの声とおっさんらの声しか聞こえない。

山口駅へ向かう途中の仁保駅で長い停車。
駅周辺にはマジ仕様のカメラを持った人がちらほら。
「もしかして、SL待ち?」と思っていたら
ホームに出ていたおとん(←物見高い男)が「来たぞ!」というので
慌ててカメラを持ってホームへ。

うわー。来たー。あー。でも人が写るー。あー。うわー。
で、撮った写真がこれ。

躍動感ゼロ。
せっかく動くSLを見たっていうのに。

(あとの写真は、わたしの横でSLに向かって
むやみやたらと手を振るおかんのブレブレの手と、
カメラを首からぶらさげ、どう撮ればいいのかわからなくなって
ホームでぼんやりしているおとんが写ってしまった)

山口駅から新山口駅、そしてバスで秋芳洞へ。

鍾乳洞に入る手前から涼しい。
入るともっと涼しい。
あー。涼しい。
暗くて涼しくて変な形のものがたくさんある。
いいところだ。

そしてエレベーターで地上へ。

…暑い…さっきまでの涼しさはなんだったの…

が、おとんは構わず、「秋吉台の展望台へ行く!」とすたすたと歩き始める。
かなりの傾斜を登り切って目の前に広がった風景。

おおー!
すごいすごい!

でも暑い…。

興奮して写真を撮りまくる年寄り2人をおいて
冷やしわらび餅を買う。
売っていた愛想のいいおじさんがペロペロキャンディーをくれた。

売店の中で休む。
冷やしわらび餅、うまい…。うますぎる…。

そして、わたしは売店からそのままほとんど出ず、
ここで旅の主な行程は終了。

*  *  *

外歩きの多い旅行は真夏は避けた方がいいね。ホントにね。
でも、見たことのないものをたくさん見ることができた旅だった。
目的地に至るまでの風景も目の中にぐんぐん染みてきた。
疲れたけど、いい旅だった。

旅日記 7月15日

夏休み。
おとんとおかんと旅行へ行った。
行く先は二転三転し、津和野となった。

行きは九州新幹線さくらで。
指定席だったが検札に来なかったのが不思議。

新幹線を新山口駅で下車。
そこから山口線山口駅へ。

山口駅は県庁所在地の駅のわりにかわいい。

そして、向かおうとしている島根県蛙男商会に近しい土地。
寂れたたたずまいの駅に、こんなポスター3枚貼り。

1両編成のディーゼルカーはガシガシと中国山地の傾斜を登っていく。
空いた車内は空調が効いている。窓の外は緑がまぶしい。
実に気持ちいい。

山口駅から1時間ちょっとで津和野着。

昼ご飯を済ませて宿に荷物を置き、ぶらぶらする。

津和野といえばこの感じ。
それにしても鯉がでかい。でかすぎる。こわいくらい。


津和野カトリック教会。
白くて美しい教会だった。

津和野川。

青野山。

このあとかなり歩いて森鴎外旧宅へ。
しかし暑さにやられて朦朧。
和紙工芸のお店でかわいいものを見つけて少し息を吹き返す。

その後、安野光雅美術館へ。

贅沢な空間でいい絵をたくさん見た。
自分は絵の中に少しの理屈が混ざり込んでいるものが好きなので、
1つ1つの絵をじーっくりと見た。
プラネタリウムが併設されているのを知らなくて、
見ることができなかったのがとても残念。

道路をはさんだ向かいにある桑原史成写真美術館へ。
東北大震災の現地の写真が展示されていて、
ここで旅のふわふわしてた気持ちがちょっと現実に戻る。

葛飾北斎美術館へ。

こじんまりとした美術館。
門人の作品も展示されていたが、応為のものがなかったので残念。

で、この日はこれでギブアップ。
暑いと体力の減り方が尋常ではない。
太皷谷稲成神社や城跡へ登るリフトにも興味があったのだが、あきらめる。

葛飾北斎美術館のとなりの和菓子屋さんで水まんじゅうを買って宿へ。

安いプランで取った宿だったけど、
きれいだし、ご飯もおいしいし、満足。

しかも。
本の貸し出しとかあったりして、
その中に20年くらい前にわたしの中身をえぐり取ってかっさらっていった
一般にあまり流通してなさそうなマンガがあったりして、
もちろんそれを借りて読んだのだが、暑さで煮えた脳にそれはとてもとても浸透して、
いろいろと考えちゃったよ。