「わたしって、音楽が好きなんだなあって思った」
久しぶりに、本当に久しぶりに、常軌を逸する勢いで音に溺れた。
ああ。
わたしが確かめたかったのはこれだったんだな。
大概、行ったライブは楽しく聴いている。
「ほー」とか「はー」という瞬間があり、うれしく踊る。
でも、今回のtoeのライブはそんなもんじゃなかった。
10月の地元のイベントで初めてtoeを生で聴いた。
あの日の日記には
「あんなに内側に食い込んでくるような音楽は、重い。しんどい。
4人の行者が自分に与えられた苦行に向き合っているように見えたし聞こえた」
と書いている。
あの日はどうやらメンバーのコンディションも良くなかったらしい。
でも、あの重さ、嫌いじゃないんだよなあ。
それに、コンディションがよかったらどんな感じ?
とかいろいろ思った。
そして確かめたくなった。
昨日のライブでは最初の音で
「うわうわうわうわうわああああ」と堕ちた。
自分の状態が怪しくもあったのだが、それにしても。
歌詞はない。アジテーターもいない。
MCも笑顔もそんなにない。
音だけ。
ぞっとする音の隙間と容赦なく正確なリズム。
ギターのヘッドがふっと浮き上がる瞬間。
空気のように差し出されるカウント。
この音好きだ。気持ちいい。
ずーっと聴いていたい。
4人が向かい合って音を出していた。
誰のためにとか何のためにとか、そんなんじゃない。
音を出す。それだけ。
わたしは聴くだけ。
それでいい。
* * *
ライブが終わって、同行の友人が飲みながらひとこと。
「わたしって、音楽が好きなんだなあって思った」。
初めてtoe聴いた友人にもそう言わせる音だった。
* * *
しかしまあメンバーは通常運転の範囲だったみたい。
かなわんよね。